介護タクシーの収支を徹底シミュレーション!個人編

当HPをご覧になる方で検索されてくる最も多いワードが「介護タクシー 廃業率」です。

真剣に介護タクシー業務に取り組もうとされる方なら、一番気になっている部分ではあります。誰しも廃業はしたくありません。

  • 介護タクシーは廃業が多いの?
  • 高齢者が多いから引く手あまたじゃないの?
  • 介護タクシーは予約が取りにくいから不足しているんじゃないの?

などなどの様々な疑問が発生すると思います。

当記事では、介護タクシーの開業運営を専門に扱う行政書士が、介護タクシーの運営にかかる経費、そこから逆算した目標とすべき収入、そして収支がどうなるかを徹底シミュレーションしました。

この記事を最後まで読むと、介護タクシー(福祉タクシー)の運営にどの程度維持費がかかるか、どれくらいのお客さんをどれくらいの単価で取ればいいのかがわかります。

当記事は個人事業として介護タクシーを開業した場合の収支をシミュレーションしています。法人での開業を検討されている場合は下記の記事もご参考下さい。

【開業志望必見】介護タクシーの平均的な収支はこうなる!法人編

尚、介護タクシーの業界全体についてや、儲かる儲からないのビジネスモデル大枠については、下記の記事をご覧ください。

【開業志望必見】介護タクシーって儲かるの?供給過多?需要はあるの?

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介護タクシーは個人事業主でも開業できる

まず大前提として、介護タクシーは法人を設立しなくても開業をすることが出来ます。

介護タクシーは運送業であり、許可事業ですが、許可要件に「法人である」という規定はありません。個人事業主でも許可がおります。

因みに「介護保険タクシー」となると、個人事業主では不可能です。介護保険事業に指定されるには「法人である」という規定があるからです。

介護タクシーの個人開業、最低人数について詳しくはコチラ!

介護タクシーの年間経費

今回は個人事業主編です。前提条件として

というよくあるパターンで、二人分の生活費を稼ぐ方法をシミュレーションしてみたいと思います。

個人事業は給料という概念がない

個人事業主は乗客の売上=自分の収入という事になり、自分に自分の給料を出す事はありません。

つまり、最低限の生活費分の利益を出せば良いという事になります。

ではいろんなパターンの利益をシミュレーションしてみる事にします。

変動費

変動費については、タクシーが走った分で変動するので、個人事業でも法人でも変わりません。

条件としては

  • 大阪府の総面積:1899k㎡
  • 大阪府の総合病院数:513軒
  • 病院への平均距離:3.7k㎡
  • 朝と昼の病院の送迎2往復
  • 上記の条件で1日走行距離30km
  • 高速料金は念のために計上してあります

これで変動費の計算を行います。

軽自動車ミニバンハイエース
ガソリン代70,00090,000130,000
オイル交換代10,00010,00010,000
タイヤ代20,00024,00028,000
高速料金28,00029,00030,000
合計128,000153,000198,000

ご覧の通りです。

これに対し、下記のパターンによって固定費が変化します。ではシミュレーションしてみます。

減らせない固定費

まずは絶対にかかる経費です。

下記については、減らすことが出来ません。任意保険については徐々に安くなると思いますが、初年度20万前後からのスタートなので20万計上しています。

軽自動車ミニバンハイエース
自動車税¥7,500¥13,800¥15,700
重量税¥2,600¥7,800¥13,000
自賠責保険¥11,440¥62,500¥62,500
任意保険¥200,000¥200,000¥200,000
車検費用¥70,000¥75,000¥80,000
一年点検(法定点検)¥10,000¥10,000¥10,000
固定費合計¥301,540¥369,100¥381,200
月間固定費¥25,128¥30,758¥31,767

自賠責保険は、8ナンバーでない車だと年間¥11,000~¥63,000程度になります。

尚、車両のみの維持費、車種別で詳しくはコチラ!

減らせる固定費

次に減らすことが出来る経費です。これらは工夫や開業の状況によって減らすことが出来ます。

軽自動車ミニバンハイエース
営業所家賃¥600,000¥600,000¥600,000
駐車場代¥180,000¥180,000¥180,000
車両リース¥360,000¥528,000¥600,000
合計¥1,140,000¥1,308,000¥1,380,000
月間固定費2¥95,000¥109,000¥115,000

上記の経費は、工夫によって減らす事が出来ます。

営業所家賃:介護タクシーは自宅兼事務所が可能です
駐車場代:自宅に車庫がある場合はそれを活用できます
リース代:一括購入してしまえば月々の出費を減らせます

正直な所、介護タクシーで事務所を借りて始めるというのは少数派です。

自宅事務所、車庫は借りるというパターンが多いです。家賃がなくなると年60万以上浮くので是非活用したいです。

尚、自宅事務所については条件がありますのでご注意下さい。

自宅兼事務所について詳しくはコチラ!

経費節減後の最小経費

これらの節減を行った結果、経費に下記のような差が出ます。

総合計軽自動車ミニバンハイエース
固定+変動最大¥1,569,540¥1,830,100¥1,959,200
固定+変動最小¥429,540¥522,100¥579,200
見込み売上¥4,636,800¥4,636,800¥6,605,600
最小利益率66.2%60.5%70.3%
最大利益率90.7%88.7%91.2%

固定費+変動費の合計、最大と最小で100万以上の差が出ています。個人事業、1台2名で始める場合は、なるべくミニマムに越したことはありません。

事務所等は人を雇いたいとなってから借りるでも遅くはないでしょう。ミニマムに開業できるという介護タクシーの利点をフルに活かして開業したいですね。

各事業者様に合った事業計画については下記LINE、またはお電話で「初回無料相談希望」とお申し付け下さい。弊所から回答申し上げます。

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このような、開業後に必要な情報についてはネット上にあまりありません。弊所でまとめましたので、下記の記事もご参考下さい。

介護タクシー開業後に必要な知識について詳しくはコチラ

介護タクシー個人事業の場合の想定収入

売上については、法人であろうが個人であろうが変わりません。タクシーが走った分だけ売上がいただけます。

下記の売上の想定として、大阪の平均の病院までの距離3.7kmを走った場合、片道あたり下記のような料金が予想されます。

軽自動車ミニバンハイエース
迎車¥570¥570¥590
初乗り1.3km¥5701.3km¥5701.3km¥590
加算274m¥100274m¥100264m¥100
運賃合計¥2,040¥2,040¥2,180
基本介助¥500~¥1,000¥500~¥1,000¥500~¥1,000
機材レンタル
(オプション)
¥1,000¥1,000¥1,000~¥3,000
院内介助
(オプション)
¥500~¥1,000¥500~¥1,000¥500~¥1,000
フロア移動
(オプション)
¥500~¥1,000¥500~¥1,000¥500~¥1,000
概算合計¥2,540~¥5,040¥2,540~¥5,040¥2,680~¥7,180

かなり厳し目に出しています。

院内介助等は1,000円としていますが、実際時間制(30分2,000円等)の所も多く、この辺り合わせると往復で10,000円~14,000円程度の例が多いようです。

ハイエースについては、ストレッチャーの貸出相場が3000円程度になるので、オプションを取りやすいです。

ミニバンについては、普通の車いすを借りる人は少ないと思いますが、移動に適したリクライニング車いす等があり、用意しておけばオプション売上にプラスアルファする事も考えられます。

年500万が頭打ちではない

弊所の連携する神奈川の介護タクシー事業者の売上の推移は下記のようになっています。

開業月 →30万円
2か月目→50万円
3か月目→50万円
半年  →60万円
1年後 →70万円
1年半後→90万円

現在、この事業者は営業車を数台抱えており、1台あたり80万程度は稼ぎ出しているということです。

尚、売上ノウハウにつきましては下記のリンクご参照下さい。売上アップノウハウ提供サービスも行っています。

介護タクシーサポート・サービス向上委員会

介護タクシーで年収1000万は可能か

弊所HPで「介護タクシー 年収1000万」と検索されて来る事があります、実際可能なのでしょうか。

「年収」は利益率にもよりますが「年商1,000万」であれば、2台目を増車した次の年度には突破しているのではないでしょうか。

実際の事業者さんから話を聞いて整理した結果下記のような条件でなら見えてきます。

  • 介護タクシーは1往復単価8,000円前後
  • 病院の年間開院日は240日前後
  • 1日42,000円売上で年商1,000万
  • 1日5往復すると達成出来る

1台だとなかなか大変ですが、2台なら5往復は少ないくらいです。

加えて全てが8,000円前後ではなく、遠距離移動や院内付き添いなどで高単価の仕事も来ます。

寝てて達成できる数字ではありませんが、物理的に不可能な数字ではないので戦略次第ではないかと思います。実際1台で月80万上げている業者さんも私は知っています。

介護タクシーの売上と経費の比較と利益率

では売上と経費を比較してみます。前提条件としては

  • 一日朝昼病院送迎2往復
  • 一日走行距離:30キロ
  • 大阪からの病院への平均距離:3.7kmとして
  • 燃費は軽が20、ミニバンが15、ハイエースが10として
  • ガソリン代:180円として
  • 年間病院開院日数:230日として
  • 年間のべ乗客数:上記より年間のべ920人として

上記の条件で売上をシミュレーションした結果下記のようになります。

総合計軽自動車ミニバンハイエース
固定+変動最大¥1,569,540¥1,830,100¥1,959,200
固定+変動最小¥429,540¥522,100¥579,200
見込み売上¥4,636,800¥4,636,800¥6,605,600
最小利益率66.2%60.5%70.3%
最大利益率90.7%88.7%91.2%

個人事業の場合は人件費がない代わりに生活費が入ります。

生活費をいくらに設定するかはご家庭によりますが、事業利益率60~90%出せるのであれば、ある程度の売上を立てれば生活費くらいはゆうに賄えるはずです。

一番の課題は周知活動です、介護タクシーというサービス自体の周知、そして自社の周知です。

周知が進めば、価格競争はまだ起こっている業種ではないので、同業他社と歩調を合わせつつ連携していくと売上が上がっていきます。

同業他社、ケアマネ、高齢者や障がい者の施設等に周知を進めるのが序盤の課題です。

個人事業主は自由が効きやすい

上記はあくまでベース売上の話です。法人内だと時間内での労働しか原則不可能ですが、個人事業主については、自分の体の許す限り、深夜や時間外に対応しても構いません。

  • 長距離移動
  • 転院
  • 旅行・観光
  • 夜の救急病院への搬送
  • 救急患者の帰宅

ベース売上以外に、上記のようなスポット仕事を入れられるようになれば、ベース以上の売上が伸びるようになります。

関連事業と絡める

上記の客単価を上げる方法として、関連事業を絡めてみるのも手段です。

救援事業(緑ナンバーを使用して便利屋が出来る)

通常、緑ナンバーの車は運送事業以外に使用してはいけませんが「救援事業」の届出を出すことで、事業用車を利用して

  • 買い物代行
  • 薬受取代行
  • 介護保険外の雑用(家の掃除等)

これらが可能になります。

旅客運送業許可を持っている事で、運輸局に届出の上で便利屋のような事が出来て、それに緑ナンバーの車を活用することが出来ます。

他の許可が必要な業務以外は大体可能になります。介護保険外で、利用者様の身辺の世話等を行えます。

自由度が高い事業なのでアイディア次第で客単価の上昇が狙えます。詳細は下記の記事にて。

介護タクシー関連事業│救援事業(便利屋事業)の詳細

民間救急

介護タクシーに追加許可で、消防署からの認可を受けて、民間救急事業という事業が可能になります。

消防署やその委託を受けたコールセンターと連携を取る事が可能になります。救急まで行かない緊急度の低い患者を有償で運送出来ます。

積極的に活用している自治体は、登録している介護タクシーを紹介してくれたりします。地元消防署に問い合わせてみましょう。

介護タクシー関連事業│介護タクシーと民間救急を並行しよう!

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まとめ

今後の課題としては

  • 介護タクシーというサービスの知名度がまだ高くない
  • 料金相場が利用者に知れ渡っていない

この辺りになるので、適正料金を取っていても「こんな高いとは思わなかった」という事になります。これについては、自分が行っているサービスをいかに良く利用者に伝えられて満足を引き出せるかが課題です。

今回のシミュレーションのように、実際ここまでスムーズに売上や客単価が上がるとは思えませんが、目指す目標については上記のような体制です。いかに早く上記体制に近づけるかが、廃業率を減らす鍵です。

介護事業との並行と違い、何かとの相乗効果はありませんが、他の異業種に比べてのメリットがあります。

  • 開業初期コストが低い
  • 介護士さんの独立の手段の一つに出来る
  • 人を雇わず出来る
  • 先行者利益がある

訪問介護等も営業所のみで開業が出来ますが、法人を立ち上げ人を雇わなければなりません。

翻って介護タクシーは個人事業車一台で、体制次第で人を雇わなくても可能になります。独立したいけどまずはミニマムに、介護スキルも活かしたいという場合は、個人事業としての介護タクシー開業、ぜひご検討下さい。

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