介護タクシーの休憩所の条件

介護タクシーの開業申請書を書く段階になって「え、休憩所仮眠施設?そんな物が必要なの?」などと気づくかもしれません。

休憩所仮眠施設の為に、もう1つ物件を借りなくてはならないのでしょうか。

介護タクシーは9時~5時営業でもいいので、タクシーのように24時間営業にする必要はないのですが、休憩施設は必須です。

実は休憩所については、新しく物件を借りなくても確保する方法があります。

では、休憩施設をどう確保すればいいのでしょうか。大阪で介護タクシー(福祉タクシー)開業運営を専門としている行政書士が徹底解説します。

この記事を最後まで読むと、開業に必須の休憩所をどう確保すればいいかがわかります。

介護タクシー開業には休憩施設が必ず必要

ドライバーが休憩、仮眠するためのスペースが必要です。

疲労と睡眠不足は交通事故の一番の原因となりますので、介護タクシーだけに関わらず、旅客貨物全運送業に義務付けられています。

一般旅客自動車運送事業者は、事業計画の遂行に必要となる員数の運転者の確保、事業用の自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他の運行の管理その他の事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な措置を講じなければならない。

道路運送法第二十七条 輸送の安全等より抜粋

上記のような法律になります。休憩所の条件は下記のようになります。

ただし、介護タクシーについては深夜営業などを予定していても、ベッド等の設置は求められません。

介護タクシーの休憩所の条件

原則車庫、営業所、休憩所仮眠施設は併設

原則営業所と併設でなければなりません。

どうしても不可能な場合は、営業所から半径2km以内に休憩所を設ければ許されます。

事業規模に応じた規模の休憩所が必要。

極端に小さすぎたりしなければ許可が下ります。

休憩所は特に面積規定がありません。人が休めるレベルの広さがあればOKです。一部屋を2:3で区切り、その片方を休憩所と指定し、ソファ等を設置しても許可は下りました。

営業所や車庫に併設する場合、他のスペースと区別できるようにする

パーテーション等で区切られて、向こうが見えなければOKです。

弊所が関与した例としては、120cmくらいのついたてでの区切りは「向こうが見えるのでダメ」という事でした、その後、カーテンで向こうが見えないように区切り、許可が下りました。

自己所有、申請日から1年以上借りている

申請日から1年後まで使用権限があることが必要です。なので

  • 自己所有である
  • 申請日から1年以上契約

上記いずれも許可が下ります。

違法な建物でない、建ててはいけない土地に建ってない

下記の法律に触れていない必要があります。

  • 建築基準法
  • 都市計画法
  • 消防法
  • 農地法

元々事業用の事務所として使われていた建物ならほぼ大丈夫ですが、自宅を事務所や休憩所にするには上記法令の調査が必ず必要です。

建築基準法

シンプルに言うと、違法建築ではない建物です。

出来た時には合法でも、建てましを行って結果的に違法になっている、法律が変わって違法状態になっている等があります。

建築基準法について、詳しくはコチラ!

都市計画法

大阪では、下記の表で✕の地域は休憩所に出来ません。

営業所休憩所単独車庫
(建築物)
建物付属車庫
(建築物)
青空車庫
第一種低層住居専用地域1階以下
600㎡以下
建物延床1/2以下
第二種低層住居専用地域2階以下
150㎡以内
2階以下
150㎡以内
1階以下
600㎡以下
建物延床1/2以下
田園住居地域2階以下
150㎡以内
2階以下
150㎡以内
1階以下
600㎡以下
建物延床1/2以下
第一種中高層住居専用地域2階以下
500㎡以内
2階以下
500㎡以内
2階以下
300㎡以下
2階以下
3,000㎡以下
建物延床1/2以下
第二種中高層住居専用地域1500㎡以内1500㎡以内2階以下
300㎡以下
2階以下
3,000㎡以下
建物延床1/2以下
第一種住居地域3000㎡以内3000㎡以内2階以下
300㎡以下
2階以下
建物延床1/2以下
第二種住居地域2階以下
300㎡以下
2階以下
建物延床1/2以下
準住居地域
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域
用途地域の指定のない区域
市街化調整区域

特に市街化調整区域には要注意です。

奈良市などは、住宅街が普通に市街化調整区域であったりするので、自宅が該当すると自宅兼事務所にすることが出来ません。

都市計画法について、詳しくはコチラ!

消防法

規模に応じた消防設備があるか、避難体制があるかが問われます。

同建物内で他の部屋にも何かの営業所が入っている、過去のなにかの営業所が入っていた等であれば大きな問題は無いと思います。不動産屋さんに契約前に確認しておくことをお勧めします。

消防法について、詳しくはコチラ!

農地法

農地は基本農業以外に使ってはいけません。

なので、勿論介護タクシーの休憩所にしてもいけません。農地でないかは、登記簿や農業委員会に問い合わせて確認出来ます。これも契約前に不動産屋さんに確認しておくことをお勧めします。

農地法について、詳しくはコチラ!

近畿運輸局の審査基準

(1)原則として営業所又は自動車車庫に併設されているものであること。
ただし、併設できない場合は、営業所及び自動車車庫のいずれからも直線で2キロメートルの範囲内にあること。
(2)事業計画を的確に遂行するに足る規模を有し、適切な設備を有するものであること。
(3)他の用途に使用される部分と明確に区画され、かつ、事業計画に照らし運転者が常時使用することができるものであること。
(4)申請者が、土地、建物について1年以上の使用権限を有するものであること。
(5)建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないものであること。

一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業)の許可に関する審査基準及び細部取扱についてより抜粋

以上が介護タクシーの休憩所の条件となります。元々事務所などの用途で使われていた所を借りる分にはおそらく大きな問題は出ません。

自宅を事務所にする等の場合は少し調査をしておいたほうが安心です。

弊所で過去休憩所として認められた例

通常貨物運送などでは、休憩所の規定が

  • 一度に利用する人数が1人辺り2.5㎡以上
  • 深夜等対応の営業形態の場合はベッドが必要

という規定がありますが、介護タクシーの場合は特に面積規定はありません。運輸局に問い合わせの結果「常識的な広さがあれば許可は出します」という事です。

ベッドについても特に求められませんでした。一度に利用する人数が一人の場合、リクライニングチェアを一脚置いて置くことで許可に足り得ました。

勿論、他の運輸局や近畿運輸局での審査担当の変更、今後の規定の変更で変わることもあるとは思いますが、2023年4月現在では上記の様子で問題は出ていません。

絶対を断言は出来ませんが、ご参考にして頂けると幸いです。

変更をする時の届出

移転などのために休憩所が変更となる場合、運輸局に申請が必要です。

休憩所の位置や面積は「事業計画」になるので、これの移動は「事業計画の変更」になり、認可を受けなければなりません。

移転先の休憩所も要件に当てはまっている必要があるので、それを証明する添付書類も必要となります。忘れずに届出ましょう。

どこを休憩所にするか迷った時は

  • 事務所の一角を区切って休憩所にする
  • 別に休憩所を借りて確保する
  • 夜も営業したいから仮眠所も作る

などなど、事業計画によって必要な休憩所も変わってきます。事業計画は、開業許可の申請時に必ず立てることになります。まずは事業計画も踏まえてお気軽にご相談下さい。

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介護タクシーの開業に必要な人・物・資金リスト

介護タクシーは個人事業で営業車1台からも開業できますが、許可制ですので許可のために必要な物が揃っていないと許可が下りません。

下記、開業に必要な人、物、資金を解説した記事のまとめになります。

4つの施設、1台の車、2人の人を集めて頂く必要がありますが、揃える前からでも弊所にご相談、ご依頼頂きましたら、足りない物、揃えて頂くべき物をアドバイスさせて頂きます。

購入等してしまった後に「要件に合わない」等が出てくると経済的損害が大きいので、是非お気軽にご相談下さい。

まとめ

  • 開業には休憩所が必要。
  • 営業所と併設がヨシ!
  • 営業所の一角を休憩所にしてもヨシ!
  • 深夜営業しないようならソファとテーブルでヨシ!

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