
「運転代行業」という事業をご存じの方も多いと思います。
運転代行は人員が2名、車一台が必要です。もしこれが車0台、人間1名で出来るとしたらどうでしょうか。
- 車無いのにお客さんの元へはどうやっていくの?
- 帰りはどうするの?
- 資格や許可は必要なの?
すでにこの電動キックボードなどを利用した運転代行業(正確には運転請負業)をされている業者さんも見かけます。
どのようにすればこの業務を始められるでしょうか。専門の行政書士が徹底解説します。
この記事を最後まで読むとキックボードを利用した運転請負業の始め方、どんな仕事かがわかります。
2025年4月現在・1人運転請負業には許可が不要
「運転代行業」や「運送業」には許可や登録、資格が必要になります。
ですが、2025年現在において電動キックボード等を利用した1人運転請負については取るべき許可が存在しません。
- 随伴車を使わない(電動キックボードは随伴車ではない)
- 運送業ではない(お客様の車を運転するため
随伴車を使わないということで、運転代行業として定義されないということです。
ただし、今後事故やトラブルなどが増えれば届出制や許可制に移行していく可能性もあると弊所は考えています。
今話題のキックボードを利用した一人運転請負業とは
下記のような事業になります。
- 電動キックボードでお客さんの元へ行く
- お客さんの車に電動キックボードを畳んで乗せてもらう
- お客さんの車を運転してお客さん宅へ帰宅
- 電動キックボードで帰る
電動キックボードでも折りたたみ電動バイク、原付登録された折りたたみモペットなどでもいいです。
従来これを車で行おうとすると、自動車1台に人員2名体制になりますが、これを電動キックボードを利用することで一名で行うことができます。
随伴車を利用しないことで「運転代行業」ではなくなり「運転請負業」という業態に変わります。
人員が2名→1名になるのは大きいです。令和7年4月現在二種免許は必要なく、許可や登録も不要になります。
まずは各事業について詳しく説明させていただきます。
運転代行とは
ご存じの方がほとんどとは思いますが、運転代行とは下記のような業務です。
- 車1台、2名体制でお客様の元へ向かう
- 一人はお客様の車の運転を代行、もう一人は乗ってきた車を運転して追いかける
- お客様と車をご自宅に届けた後、乗ってきた車で帰る
「車で行った先でお酒を飲んだ、車置いて帰りたくない」ということで利用されます。
一 主として、夜間において客に飲食をさせる営業を営む者から酒類の提供を受けて酒気を帯びた状態にある者(以下この条において「酔客」という。)に代わって自動車を運転する役務を提供するものであること。
二 酔客その他の当該役務の提供を受ける者を乗車させるものであること。
三 常態として、当該自動車に当該営業の用に供する自動車が随伴するものであること。
特に三の「自動車が随伴する」についての定義が重要になります。
運転代行業には登録が必要になり、警察に登録のための届出を行います。
なぜ昔は国土交通省管轄だったそうですが、随伴車にお客様を乗せるという疑似運送行為が多発したため、公安委員会=窓口警察に管轄が移りました。
あくまでお客様の自動車の運転を代行する為の業務なので、随伴車にお客様を乗せる事は絶対にやめましょう。
運転請負業とは
運転請負業とは下記のような事業になります。
- 車の運転
- 洗車清掃
- 給油
- 車両の点検
- お客様の荷物運搬
車自体はお客様の名義の車を使います。基本的にお客様の自動車を運転し、管理する業務になります。
イメージしやすい所では役員のお抱え運転手のような存在です。
あくまで運転請負になりますので、車両の手配は禁止されています。
運送業とは
運送業とは他人の需要に応じ、有償で自動車を使用して旅客を運送する事業となります。
- 運転手は自社の人間
- 自動車も自社の名義
- 依頼を受けてお客様を運ぶ
この場合、運送業の許可を得てナンバーを緑色または黒色の営業ナンバーにした上で事業を行わなければならないです。
運転請負業・運転代行業・運送業の違い
上記3事業の違いは下記のようになります。
運転請負業 | 運転代行業 | 運送業 | |
運転手 | 自社 | 自社 | 自社 |
自動車 | お客様名義 | お客様名義 | 自社名義 |
ナンバー | 自動車なし | 随伴車は自家用ナンバー | 営業ナンバー |
営業許可 | 不要 | 必要 | 必要 |
二種免許 | 不要 | 必要 | 必要 |
運転請負業については基本的に自動車はなしです。公共交通機関などで客先へ向かいます。
ご覧の通り、運転請負業は免許も自動車も許可も必要ありません。
「今日から運転請負業やります」と言えば出来るようなものです。
運転請負業(1人運転代行)の集客・需要は?
客層は運転代行と同じく、飲酒の上で車が運転できなくなった方が主になります。
繁華街を発車し、郊外のお客様宅まで乗せていくルートが多くなると予想されます。
・運転請負(1人運転代行)のメリット
キックボードを使った運転請負(1人運転代行)については下記のメリットが考えられます。
- 二種免許不要
- 許可不要(令和7年4月現在)
- 初期投資が電動モビリティ1台
- 渋滞に左右されにくい
- 移動は若干遅め
- 人件費が運転代行の半分
運転請負(1人運転代行)のデメリット
キックボードを使った一人運転請負業については下記のデメリットが考えられます。
- 雨天が厳しい
- 事業の知名度が低い
- 集客を工夫しなければならない
メリット・デメリットを勘案して、メリットが上回れば是非開業に向けて舵を切ってみてはいかがでしょうか。
フランチャイズが配車アプリや保険を提供している
電動キックボードなどを利用した1人運転請負については、フランチャイズが存在します。フランチャイズの加盟は下記のメリットが考えられます。
- 配車アプリがある
- 運転請負(1人運転代行)用の保険に加入出来る
フランチャイズに入るとランニングコストが増えますので、慎重に検討しなければなりません。
運転請負(1人運転代行)は集客さえできればフランチャイズに加盟しなくてもやっていけます。
コロナ後に飲み会需要は戻ったが運転代行は減ったまま
ZOOM飲み会などで一時飲み会需要が減りましたが、結局コロナ後ほぼもとに戻りつつあります。
ただ、コロナ禍中に運転代行の需要が一気に減り、廃業をした事業者さんが多く、コロナが空けた今、事業者さんの数は戻っていません。
運転代行を始めようとすると、許可申請先は公安(警察)で、資格なども必要になり、許可までに半年ほどかかります。
二種免許は現在行なっている教習所が少ないので、ハードルは低く有りません。
翻って1人運転請負は、電動折り畳みモビリティを一台買えば始められます。
繁華街の飲み屋に営業に行くもよし、HP戦略を取るもよし、フランチャイズに加盟するもよしです。
まとめ
- 令和7年4月現在、1人運転請負は無資格無許可で行える
- 電動折り畳みモビリティで従来の運転代行が1人で可能
- 資格や公安への登録が必要なく始められる
- コロナ禍で運転代行事業者が減り、需要はある状態
- 事故やトラブルが増えれば今後は届出制や許可制になる可能性がある